診療予約システムと集患・増患
~「患者満足度の向上」から「集患・増患」を考える~
今回のテーマは「集患・増患」つまり、「どうすれば、たくさんの患者さんに来てもらうことができるのか?」ということです。
「集患・増患」という考え方には賛否あるかもしれませんが、「患者さんにとって心地よい環境を用意して、自然と患者さんが集まる状態にする」と言い換えれば、否定する方は少ないと思います。ここで重要なのは「患者さんにとっての心地よさ」、つまり「患者満足度の向上」を意識しておけるか、否かです。「待ちやすさ」や「相談のしやすさ」といったことに対して真摯に向き合うクリニック・診療所と、そうでないクリニック・診療所を比較すれば、当然前者の方が患者さんは行きやすい訳で、全体の患者数にも影響します。
もちろん「どこまで手間をかける」「どのくらいのコストは許容できる」と考えて施策を決めていくことにはなりますが、「どんな事が集患対策、増患対策として考えられるのか」といった情報を知らなければ的確な判断はできないと思いますので、まずは情報を整理してみましょう。
~集患・増患対策を考えるための、2つのポイント~
マーケティング的な発想で「人を集める」ということを考えると、良く言われるのが「接点を意識する」ということです。「接点」というのは「情報と接する点」の事ですが、クリニック・診療所を前提とすると「クリニック・診療所に関する情報と、患者さんが接する部分」となります。人を集めるために「接点をどう意識するか?」について考える際には、2つのポイントが重要となります。
1.「接点」を増やすこと。
2.「接点」を最適化すること。
「クリニック・診療所に関する情報」というのは「どこに存在するのか」といった基本的な内容から、「どのような意識を持っているのか」「どのような対応ができるのか」といった突っ込んだ内容まで割と広い意味を持ちますが、状況次第で適切な情報の深さ・解像度は変わります。例えば「駅の看板」と「クリニックのホームページ」では、情報を掲載できるスペースの広さも、情報を受け取る相手が興味を持っている度合いも全く異なりますので、それぞれに適した内容を選ぶ必要があります。「駅の看板」のような「知らない患者さんがクリニックを知る」という部分であれば、「できるだけ目につきやすい場所」「わかりやすい内容」「目を引くキャッチフレーズ」などが重要な「最適化」のポイントになります。「クリニックのホームページ」であれば、「診療方針の説明」あるいは「院内の雰囲気や設備紹介」といった部分で「豊富で共感できる内容が盛り込まれているか」といった内容までが「最適化」のポイントになってきます。
~クリニック内の「接点」最適化~
さらに来院患者に対しては、クリニック側の一挙手一投足がすべて「クリニックの情報」となり得ますので、状況に対して「どのような施策を取っているのか」という行動の一つ一つが「最適化」の対象となります。「駅の看板」や「クリニックのホームページ」といった間接的な情報とは異なり、直接的に「受け手である患者さんが体験を通して得る情報」なので、患者数に与えるインパクトも大きいことが予想されます。具体的には「診療の幅を広げる設備」「院内の清潔さや過ごしやすさ」「スタッフさんの接遇」といった部分が該当しますので、「設備を増強する」「アンケート調査で満足度を図る」「定期的にスタッフ教育をおこなう」といった活動が最適化を図る上でのポイントになってきます。
このように「患者さんとクリニック・診療所の情報が接する部分」にフォーカスを当ててそれぞれを「最適化」しつつ、同時に「より多くの人にクリニックの情報を知ってもらう」「できるだけ多くの場面で人と情報を接触させる」というのが、「集患」や「増患」の基本的な考え方となります。それぞれの内容によっては「まだクリニックに来たことが無い人」が対象になることもありますし、「クリニックに1度でも来た人」が対象になることもありますので、それぞれのシーンにおいて対象となる相手を意識しつつ、個別対策を考えていくことが重要です。特に「患者満足度の向上」という観点からすると、「わかりやすく、伝わりやすい情報であること」が共通して大事になってきますので、最適化の際には強く意識しておくことをおすすめします。
~患者満足度向上のサイクル~
「患者満足度の向上による集患」を考える際に、時間軸で切り分けて考えるとより具体的なイメージに結びつけやすいと思います。「まだクリニックに来たことが無い人」にとっては「行きやすい」と思ってもらうことが、「クリニックに来ている人」にとっては「待ちやすい」と思ってもらうことが、「クリニックから出て、次にクリニックに行くまでの人」にとっては「頼りやすい」と思ってもらうことがそれぞれ重要です。これらのポイントを上手につなげることができると、サイクルを描いて効果的に「患者満足度の向上」を期待することができます。
~診療予約システムと集患・増患~
さて、診療予約システムの話を重ねてみると、どうなるでしょうか。
例えば、「インターネットからの予約」は新患が来院するきっかけを作ってくれるかもしれません。院内で番号券を渡したり、待ち状況がモニター表示されていれば、来院した患者にとって待ちやすい環境を作ることができるでしょう。スタッフも業務中に待ち状況を確認されることが減り、余裕を持って患者さんに接することができます。アプリを通したメッセージ機能を活用すれば、「インフルエンザの予防接種がいつから予約開始です」とか「新しい検査機器を入れたので、お気軽にご相談ください」といった案内も積極的に通知できます。結果「気配りがされているクリニックだ」と思ってもらいやすくなるかもしれませんし、「あまり待たずに済むかもしれない」といった期待も高まるでしょう。これらは「患者満足度向上にともなう集患や増患」に重要な「接点の増加と最適化」に【診療予約システム】が効果を発揮することを意味します。
つまり、【診療予約システム】を導入していないクリニックと比較して、システムを活用できるクリニックの方が「集患・増患」を考えやすい環境にあることは明らかです。「患者満足度向上のサイクル」に照らしてみても、当てはまる要素が多い方が「サイクルを回しやすく、満足度を向上させやすい」と言えます。
~新規開業のタイミングでシステムを導入すべきか、否か~
新規開業を検討、あるいは準備中の先生の中には集患対策を特に気にされている方も多いかもしれません。一方で「開業してすぐに混む訳では無いと思うし、診療予約システムは後から考えれば良いのではないか」といったご質問をいただくこともあります。【診療予約システム】を「不満やクレームが出ている状況を改善するもの」と捉えれば「混んでから導入した方が良い」と言えなくもないのですが、それ自体は「マイナスの状況をゼロに近づける」という方向の考え方です。「集患・増患」を考える上では「元々足りない部分をプラスにしていく」という考え方が重要ですので、考え方としてはややズレています。クリニック・診療所をインターネットで調べる所から「クリニック選び」は始まっていますので、沢山の患者さんに来てもらうためには、できるだけ早い段階から「患者満足度向上のサイクル」を回して「普段から相談しやすいクリニック・診療所」として定着させていくことが重要です。つまり【診療予約システム】はむしろ患者さんが少ないうちから積極的に活用するべきなのです。