「スマホは苦手な人」が多いクリニックで使う、順番予約運用のコツ
~スマホ利用が少ないクリニックで予約システムは無力か?~
「お年寄りが多いから、システムの運用は難しい気がする」
「スマホを使っているような世代の人は割合としては少ないので、予約システムはあんまり合わないと思う」
このように考えている先生も多いようです。
確かに、現状例えば「80代以上の患者さんのほとんどがスマートフォンを使っているか?」と聞かれれば、「そこまで普及はしていない」と答えることになるのが実情ですが、そもそも「スマホを使わなければ、予約システムは意味が無いのか?」というと、「そんなことはない」と言えます。アイチケットを導入しているクリニックでは、オンラインから予約を取ることができないようにあえて設定しているクリニックも多くありますし、そのようなクリニックではそもそもスマートフォンの活用はそれほど重視されていません。
お年寄りが多いクリニックでは「お年寄りが多いことを前提とした運用」が可能ですので、ポイントを押さえて活用するのが重要です。
~「スマホの利用率が低い」前提で注意するべきポイント~
「スマホの利用率が低い」、あるいは「お年寄りが多いので、複雑なことはやりたくない」というような状況の中で予約システムを運用するコツはいくつかありますが、最も重要なのは下記2点です。
【インターネットから予約を取る「オンライン受付」を優遇し過ぎない】
中心となるのは「スマートフォンを使わない」方々なので、オンライン受付を優遇し過ぎない工夫が必要です。振り切った運用として「オンライン受付そのものを実施しない」という方法もありますが、オンライン受付の恩恵も多くありますので「オンライン受付を優遇しすぎない状態で、オンライン受付を実施する」という方法を、まずはおすすめします。
【スマートフォンなどのITツールを使わなくても、状況の把握ができる】
運用が複雑な部分をITツールで解決しようとするのは一般的には間違った考え方ではありませんが、前提に「ITツールが苦手な相手を対象とする」という条件が入って来るのであれば当然話は変わってきます。例えば順番予約の待ち状況確認1つを取ってみても、「順番通りに進んでいないから、どれくらい待つかはスマホで確認しないとわからない」といった状況では、クレームが発生しやすいと言えます。
まずは、これら2点を押さえて運用を考えることが重要です。
~順番予約を前提とした、具体的な対応策~
診療予約には、大きく分けて<順番予約>と<時間帯予約>という2種類の予約方法があります。
<順番予約>は「番号券などを渡して順番を約束する」方法、<時間帯予約>は「特定の日時を約束する方法」ですが、<時間帯予約>の方がバリエーションに富んでいて、適切な運用を固めるための前提条件が複雑になりがちです。「全体を1つの方法で網羅するか、否か」「対象のボリュームはどの程度か」「状況の変化にどの程度柔軟性を持って対応する必要があるか」など複数の視点を組み合わせて決めていく必要があるので、一概に論じにくい部分もあります。
その点、<順番予約>はシンプルな構造になっているので対策が取りやすく、また<順番予約>における「スマホ利用者を優遇しすぎない」という考え方は、そのまま<時間帯予約>の特定のシーンで流用できるものとなっていますので、今回は<順番予約>に絞って考えた上で、特に重要な対応策を1つだけお伝えします。
~流入チャネルによって、開始時間をずらす~
非常にシンプルですが「インターネットの予約開始時間と窓口の受付開始時間をずらす」という方法が、最も効果的かつ重要です。
実はずらし方にコツがありまして、ただずらせば良いというものではありません。よくある誤解として「インターネットで順番が取れるなら早い時間からできるに越したことはない」といった意見がありますが、これは「スマホ利用者が少ない前提で」システムを効果的に使いたいという場合は、あまりおすすめできません。
「オンライン予約の開始時間を、誰も来ていない早朝から設定する」という考え方は、「多くの人がインターネットを活用できるような状況」つまり若い人が多い状況を前提としていますので、スマホ利用者が少ない場合には逆の考え方が有効です。つまり「窓口の受付開始時間の後に、オンライン予約を開始する」というのが、この場合おすすめのずらし方になります。
~変わらなくても、デメリットが発生しないことが重要~
「窓口の受付開始時間の後に、オンライン予約を開始する」という方法が目指しているのは、「お年寄りにとって、今までと同じやり方で不利益を被らない」「スマホが使えなくても、損はしていない」という状況です。窓口がオープンした時点で先に予約が入っていることはありませんので、「オンライン受付のやり方はわからないので窓口に来た」「スマホが使えないから順番を取らずにそのまま窓口に来た」といった方々にとっては何も不利益が発生しません。
もちろん「スマホを使えば空いている時間でオンライン予約できたから、その時間を家で過ごせた」というような「オンライン受付ができることによるメリット」は別で発生しますので、そこと比較すれば「不公平だ」と言えなくもないのですが、さすがにその点にメリットを感じるのであれば「オンライン受付を覚える努力」はするべきです。個々の意見に耳を傾けるのも大事ですが、変わることそのものに対する批判をすべて拾っていては、より大きな問題を見過ごすことになりかねません。
ただ、ここでおそらく重要なのは「今までと同じことをしていてもデメリットが発生しない」という部分で、この点を保証することがまずは大事です。
~具体的な時間差はどのくらい?~
実際にはシステムを使いながら最適なポイントを探っていくことになりますが、導入時点では「窓口がオープンしてから、30分後にオンライン受付を開始する」というケースが多いようです。
これは「スマホが使えない人は朝一で並ばないと、オンライン受付に先を越される」というような切迫感が出ない程度のゆとりをもちつつ、「オンライン受付の利便性も担保できて、インターネットからも一定数予約が入る状態になる」といったバランスを考慮した上で、その後の方針も決めやすいので採用されています。
実は「窓口がオープンする前に並んだ患者さんの対応にかかる必要最低限の時間」と「集中して入って来た分のカルテ登録などの処理時間」を考慮して、スタッフが対応しやすいという実務的な側面もあります。
~調整とルールの周知~
その後の調整としては、よりスマホの利便性を高めようと思えば「オンライン受付開始時間を前倒しにする」といった考え方になりますし、よりお年寄りに寄り添うのであれば「オンライン受付開始時間を後ろに倒す」といった考え方になります。
ただしこのとき、「前と時間が変わったから、オンラインに先を越された」というような行き違いを防ぐために、あまりルールを頻繁に変えすぎないことや、メッセージ機能・告知資料等を活用して患者への周知活動を積極的に実施していくことが重要です。