事例の研究(2)順番⇒時間⇒順番⇒併用
導入環境の概要
※期間ごとに(1)~(4)の運用を切り替え。
予約方式 | (1)順番予約 |
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オンライン予約 | (1)順番予約 当日の診療開始30分後~診療終了30分前まで実施 |
院内モニター | (1)待ち状況を表示 |
番号券・予約票 | (1)番号券を発行 |
電子カルテ連携 | 連携しない |
受付端末の種類 | アイチケットのレンタルiPadを使用 |
受付以外の設置機器 | 呼び出し用として診察室でインターネットに接続されているパソコンを利用 |
はじめに
シリーズ【事例の研究】では、実際にあった導入・運用事例を取り上げながら、予約システムについて考えていきます。
プライバシー配慮の観点から基本的にクリニック名は伏せつつも、可能な限り詳細な情報を提供し、これからの予約システム導入検討や運用構築の参考にしていただけるよう努めて参ります。
2回目に取り上げるのは、アイチケットの予約システムを長年【順番予約】でお使いいただいた後、【時間帯予約】に変更、その後【順番予約】に再度変更の後、【順番予約と時間帯予約の併用】に運用を変更されたクリニック様の事例です。
経緯の概要
運用方法は(1)~(4)の順に内容を変えながら今に至り、現在も予約システムを活用されています。
導入以来数年間、こちらのクリニック様では「順番予約」によるシンプルな運用を継続されていらっしゃいました(1)。
その後、新型コロナウイルスの蔓延とともに感染対策を強化する必要が出てきましたので、「時間帯予約」のみの運用に切り替えました(2)。
2年近くが経過したところで人の流れが再び活発化しはじめ、患者数も増加してきたことを受けて、感染対策に配慮しながら初期同様の「順番予約」に戻しました(3)。
更に、「『時間帯予約』の方が時間の都合がつけやすい」といった患者様からのお声に配慮し、「順番予約」+「時間帯予約」を併用する運用に切り替え(4)、今に至ります。
予約方式(1)
元々、こちらのクリニック様は栄えたオフィス街にあり、患者様の人数が非常に多いことから、待ち時間に対する問い合わせが度々発生していました。
オフィス街にあるクリニック様ではよくあるお話ですが、患者様が仕事の合間に来院されることも多く「どれくらいの待ち時間を見込む必要があるのか、わからないと困る」といった切実なお声が多く寄せられていたようです。
そこで待ち状況の目安を出しつつ、オンラインで順番が取れるようにシステムを導入し、標準的な内容で「順番予約」の運用を開始されました。
システム導入前と比べて待ち時間に対する問い合わせも減り、患者様・スタッフ様ともに快適な環境を実現することができました。
予約方式(2)
それまでの運用に大きな問題があった訳ではありませんが、コロナ禍に入ったことで感染症対策をさらに強化する必要が出てきました。
「順番予約」を継続しながら感染症対策を強化するか、「時間帯予約」に切り替えて患者同士を時間ごと分離させるか、慎重に検討された結果、後者の「時間帯予約」に運用を変更されました。
1人当たりの時間が前後するクリニック様において、患者数が多い状態で「時間帯予約」の運用をすると時間を守れなくなりがちですが、時間通りに運用できれば、患者様・クリニック様双方にとって大きなメリットが出てきます。特にコロナ禍では多くのクリニック様で患者数が激減したため、「時間帯予約」を全面的に取り入れるケースが増えました。
タイミング的にオフィス勤務だった方々が在宅勤務に移行されるなど、オフィス街ならではの事情で患者数が大きく減ったことも影響し、こちらのクリニック様も無理なく「時間帯予約」に移行することができました。
これにより、高い患者満足度を保ちつつ、強力な感染症対策が実現できました。
予約方式(3)
感染症対策を重視した「時間帯予約」への運用切り替えは功を奏し、大きなトラブルもなく順調にシステムを活用されていましたが、年月が経つと重症化リスクの低下に伴いオフィス街にも活気が戻ってきました。
こちらのクリニック様でも段々と、予約枠が埋まってしまい、予約が取りづらい状態が続くようになってきました。
単純に予約枠を増やすのは限界があります。特に、無理に詰め込むような予約の受け方をすれば「予約をしたのに待たされる」といった状況から、患者満足度の低下を招きます。
そこで、導入当初からしばらく運用されていた「順番予約」に再度戻すことになりました。
待合室が密にならないように、院内での長時間待機は避けてもらうような周知は必要となりましたが、感染症対策をしながら「時間帯予約」運用時よりも多くの患者様に対応できるようになりました。
予約方式(4)
順番予約への切り替えも順調に進みましたが、仕事の合間に来院される患者様から「できれば、日時を決めて予約したい」という要望が、一定数残りました。
また、院長先生はコロナ禍前よりも患者数は少ないと感じられており、集患効果も意識されていらっしゃいましたので、運用中の「順番予約」に「時間帯予約」を組み合わせることになりました。
「順番予約」と「時間帯予約」を併用する際、特に注意が必要なのは「時間帯予約」の予約人数です。
順番で待っている患者様にとって「時間帯予約」の患者様は割り込んだように映るので、多く予約を受けすぎると「順番予約」で待つ患者様の不満が高まります。このため、順番で待つ患者様が不満を持たない程度に抑えた人数を「時間帯予約」側で設定する必要があります。
こちらのクリニック様ではその点を考慮の上、「時間帯予約は、1時間あたり4人」とすることで、バランスを取りつつ併用に成功されました。
オンライン予約
順番予約は一貫してオーソドックスな設定で、オンライン予約も「当日のみ、診療開始30分後~診療終了30分前まで」となっています。オンライン予約を重視しすぎないことで、円滑な運用を狙っています。
(2)時点での「時間帯予約」では、当日も含めた直前までオンライン予約を受け付けていました。オンライン予約以外に「窓口や電話での、スタッフ経由による予約」も受け付けていましたが、患者数が少ない時期は予約枠に空きが発生してしまうこともあり、直前まで予約ができるようギリギリまで開放しました。また、急性疾患の患者様が多い耳鼻咽喉科のクリニック様であったこともあり、予約が前日と当日に集中しやすいといった事情も「当日を含めた『時間帯予約』」を採用したことに影響しております。
対して(4)時点での「時間帯予約」で中心となるのは「当日の『順番予約』」ですので、「当日は『順番予約』のみ、『時間帯予約』は前日まで」と切り分ける運用にしました。仮に「時間帯予約」の枠が残っていたとしても当日すぐに埋まってしまいますし、すぐに埋まる予約枠を当日まで残せば、キャンセル前提の仮押さえ的な予約の取り方を助長しかねないとの心配からこのような設定にしたところ、大きな混乱もなく現在もスムーズに運用できています。
院内モニター
(1)(3)の「順番予約」では待ち状況を表示、(2)時点「時間帯予約」のみの運用時は進行状況を表示、(4)併用時は「順番予約」の待ち状況のみを表示しました。
(2)時点では各時間帯ごとに番号を渡す運用にはしておらず、「△人目 /○人中」といった表示を出すのみに留めました。時間帯予約で番号券を渡すことも可能ですが、一旦約束した時間を守る前提でしたので、あくまで進行状況がスムーズであることを示すための目安として機能させました。
(4)では「時間帯予約」が一部のイレギュラーとして扱われるため、待ち状況はメインの「順番予約」のみに限定しております。
番号券・予約票
「順番予約」では「番号券」を、「時間帯予約」では窓口で患者様に予約日時を共有する「予約票」を発行し、渡しております。
「時間帯予約」で「番号券」を渡さない運用としていることは、先述の通りです。
電子カルテ連携
シンプルな操作で特に「連携の必要性を感じない」とのご意見から、連携可能な電子カルテをお使いですが、連携しないでご利用されています。
操作端末
「順番予約」で番号を発行したり、「時間帯予約」で予約票を発行する際の「受付端末」は、保守や携帯電話の回線がセットになったレンタルiPadをご利用いただいております。
主に「順番予約」で番号を進めるための「呼出端末」は、各診察室に設置されたインターネットに接続できるパソコンをご利用されています。
「受付端末」に関してはトラブル時の影響が大きいためレンタルiPadを強くお勧めいたしますが、「呼出端末」に関してはインターネットに接続できる端末であれば代替が利きやすいため、場合によってはこちらのクリニック様のようにパソコンを使われることもあります。
おわりに
今回は、環境の変化に応じて都度運用を変え、柔軟に対応されてきたクリニック様の事例をご紹介いたしました。時には患者様の意見も取り入れつつ、しっかりと芯のある運用を採用していただいたことで、効果的に予約システムを活用されていらっしゃるのが印象的です。予約システム検討、活用の参考にしていただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
- 投稿者: 佐藤三千代
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