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クリニック予約のヒント(16)「3時間待ちの3分診療」を考える

クリニック予約の
疑問に答えるシリーズ

シリーズ「クリニック予約のヒント」では、予約システムに関する質問・疑問に対して端的に回答していきます。

【16回目】となる今回はこちら

Q:患者数が増えたことで待ち時間が長くなり、口コミ投稿で「3時間待ちの3分診療」などと書かれてしまいました。完全予約制にはできませんし、患者数が多いことからも1人あたりにかける時間は適切だと判断しています。気にしても仕方がないことかもしれませんが、予約システムで状況を改善することは可能でしょうか?

では、参ります。

ご相談内容の整理

はじめに少し情報を整理いたしましょう。

まず、課題と感じておられるのは「長くなっている待ち時間への対策」、きっかけとなりましたのは「口コミ投稿」でございます。

前提条件といたしまして「完全予約制にはできない」と、お考えであり、「1人あたりの時間は3分程度で、それ自体は妥当」なのでございますね。

では、この状況において予約システムに期待できることを考えてみたいと思います。

問題は「長い待ち時間」そのものか?

まず考えたいのが、「3時間待ち」という状況の是非でございます。

もちろん「待ち時間」そのものは、短いに越したことはございません。特に患者様にとってみれば、待ち時間が短ければ短い程自由な時間が増える訳でございますから、喜ばしい状況でございましょう。

しかし、クリニック経営という観点ではいかがでしょう?いつ、誰が行っても「常に待ち時間が無い」といった状況を、手放しで喜べるでしょうか?

これについては、答えていただくまでもございません。そのような状況では、安定したクリニック経営は極めて困難でございましょう。

そもそも、そのような「真に待ち時間が短い」クリニックに「患者様が喜んで行く」という話も、やはり違和感を感じます。逆説的な捉え方をするならば、「人気のクリニックである」からこそ患者様は集まるとも言えましょう。つまり「一定の患者様が集まる状況」の上で、「待ち時間の短さ」が望まれているということになります。

この状況に対応するための最もシンプルな発想は「日時を決めた予約制」の採用、つまり「時間帯予約による、完全予約制」が可能であれば、一定数患者様が集まっていてもそれぞれへの対応時間を決めてしまうことで、待ち時間を短くできます。

時間帯予約は万能か?

しかしながら多くのクリニック様では、「1人当たりの診察時間が一定にはなりにくい」といった事情が当然のごとく存在しております。それぞれの時間が一定ではないことから、個別に時間を決めてしまうと中々予定通りには進みません。予定よりも時間がかかれば「予約患者を待たせる」といった状況が、反対に予定より早く終わるならば「次の予約患者がまだ来ていない」といった状況が待ち受けております。

このため時間帯予約では、1枠の時間を複数人でシェアし、前後のバランスを取ることが多々ございます。1枠の時間が長ければその分バラつきが収まる可能性が増えますが、枠の時間が長くなればなる程「待たない時間」も失われます。従って1枠の時間を極端に長くすると、「予約により待たせない」といった意図からは外れてしまいます。つまり、「患者様が我慢できる範囲で待たせる」状態でバランスを取るのが、「時間帯予約による完全予約制」の現実的な落としどころという事になりましょう。

しかしこの「バランスを取る」という部分が、患者数の多いクリニック様では非常に危ういポイントでございまして、多くの場合、1枠に対する予約を多く取り過ぎた状態になりがちです。「1人でも多く対応してあげたい」といった気持ちからそうなるのでございましょうが、結果として「予約をしたのに、かなり待たされる」、しかも「いつまで待たされるかわからない」といった状況に陥るクリニック様が少なくありません。

そのような状態になりますと当然患者様からの不満がスタッフ様に向けられることになり、今回前提として挙げられたような「完全予約制にはできない」といったご意見につながって参ります。もしかするとこちらのクリニック様でも、過去にそのようなご経験をされていらっしゃるのかもしれません。

待たせても、満足度を下げない。

ここで改めて、「3時間待ちの3分診療」の何が問題となっているのか考えてみましょう。

「3時間待ちの3分診療」と揶揄する発言の裏には、「自分は大事に扱われていない」という主張が透けて見えます。更に言いますならば「もっと大事に扱って欲しい」という、その患者様の願いの裏返しであるとも思えます。

もしかすると「3分で終わるならば、自分はもっと優先的に対応してもらいたい」といった考え方をされているかもしれません。実際にその方のみが周りと較べて極端に短時間なのであれば、それ程待たせず間に割り込むという対応も検討されるはずでございますが、こちらのクリニック様では「患者数が増えたことにより待ち時間が長くなった」「(3分診療と言われても)1人あたりにかける時間は適切」と先生が仰っていることから想像するに、ほかの患者様もおそらく同様の状況なのでございましょう。

つまり「特別扱いは出来ない」、いや「するべきではない」相手でございます故、平等な対応の中で対策を取らねばならない訳でございます。

しかしながら、「大事に扱う」とは一体どのようにすれば宜しいのでしょうか。これは人の感覚の問題ですから、なんとも明確な答えが探りにくい問いでございますね。

では、「大事に扱われていない」というのは一体どこから来る感覚でございましょうか。

行ったり来たりを繰り返しているようにも思われるかもしれませんが、ここが重要な分岐点でございます。先程はここで「待ち時間が長いこと」が問題であると仮定し、時間帯予約により待ち時間そのものを短くすることを考えました。しかし、今回はその方法では問題を解決できそうにありません。

私見で恐縮ですが、もしも私が患者であればこのような時、次のように感じることでしょう。

「あぁ。せめて待たされるならば、どのくらい待てば良いのか教えて欲しい。」と。

もちろん、待たない状況を作れるならばそれに越したことはございません。しかし、それが多くのクリニック様で難しいことも事実。これは先ほどの通りでございます。

ならば割り切って「待たせつつ、どのくらい待つかを患者の皆様に伝える」仕組みができれば、少しは「大事に扱う」ことにつながりましょう。「3時間」という明確な時間はさておき、逐次「待つ」ことが分かれば、長い待ち時間を少しでも有効に活用することが可能となります。もちろん、スマートフォンなどの携帯端末で状況の確認ができれば、一定時間クリニックの外でも自由に過ごすことができましょう。

時間は決められないことから、先着順の番号を目安に「どれくらい待つか」を共有する。

これは正に「順番予約」の仕組みそのものでございます。

元来「順番予約」とはこのような「待たせても、満足度を下げない」ために考えられたものです。

今回ご相談いただいたクリニック様には是非とも「順番予約」の仕組みを活用し、患者様の不満を解消していただきたいと思います。

さて、今回はやや端的とは言い難い流れでございましたが、一つの答えが出ましたのでまとめに参りましょう。

Summary(まとめ)

  • シンプルに待ち時間を短くするならば、まずは時間帯予約による完全予約制を考える。
  • 診療所では、時間帯予約による完全予約制が上手くフィットしないケースも多い。
  • 「予約したのに待つ」という状況になれば、患者満足度はむしろ下がる可能性が高い。
  • 予約制にしなくても、「どれくらい待つか」を共有することで患者満足度の向上が期待できる。
  • 順番予約を活用すれば、実質待たせても、待つことに対する患者の不満を抑えることができる。

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