クリニック予約のヒント(5)開業のタイミングで必要?
クリニック予約の
疑問に答えるシリーズ
シリーズ「クリニック予約のヒント」では、予約システムに関する質問・疑問に対して端的に回答していきます。
5回目となる今回はこちら
Q:これから開業を予定しています。個人的には、予約システムは患者数が増えた後に導入しても遅くないと思っていますが、開業のタイミングで導入した方が良いという話も聞きます。新規開業のタイミングで導入するメリットがあれば、教えてください。
では、参ります。
予約システムの様々な顔
「予約システム」と一概に言っても、製品によってかなりバラつきがございます。従って、今回のご質問に関しては「その製品が持つ特徴次第」という部分も多分に含まれますが、まずは一般的に、予約システムを開業のタイミングで入れるメリットについて考えてみましょう。
少し抽象的ではございますが、予約システムが可能とするのは主に、下記のようなものかと存じます。
・予約管理の効率化。
・待ちやすさの向上。
・インターネット受付など、システムによる接点の多様化。
これらが、新規開業のタイミングであった方が良いのか、否か。その判断次第ということになりましょう。
予約管理の効率化
これは主に、「時間帯予約の機能が、どれ程の恩恵をもたらしてくれるのか?」といった部分とリンクして参ります。
もしも、予約システムが無い状態で「日時を指定した予約」をおこなう場合、その管理はどのようにすれば良いのでしょうか?アナログな方法であれば、「ノートを使って管理する」といった方法がございます。あるいは、少しデジタル化された方法であれば、「スケジュール管理のアプリを使う」といった方法もございます。電子カルテのスケジュール管理機能・予約機能は後者の部類に該当します。
ノートと、スケジュール管理アプリを比較した場合、違いはどのような部分に出て来るのでしょうか?一例ではございますが、例えばノートの場合、1冊のノートに予約の情報が集約されますので、物理的な置き場所を移動させた際など、探す手間が発生するかもしれません。スケジュール管理アプリの場合、そのアプリがクラウド対応しているか否か等の条件にもよりますが、複数の端末からの同時アクセスが可能となり、1冊のノートを探し回るような状況は防ぎやすくなるでしょう。
では、スケジュール管理アプリと予約システムの予約管理機能で異なる部分はどこでしょうか?細かい製品ごとの特長を除けば、「インターネットを通じて予約できるか、否か」、この1点こそが大きな違いと言えるでしょう。しかし、「予約管理の効率化」という観点からすれば、大きな差はありません。
つまり、「予約管理の効率化」という1点のみで考えるのであれば、代替手段によっても効率的な運用が可能ですので、予約システムの導入タイミングは、もう少し慎重に検討された方が良いかもしれません。
もちろん、スタッフ様の研修期間を取りやすいこと、いずれ導入するのであれば早い方が慣れやすいことなど、早い方が良いメリットも当然ございますが、その点は予算との兼ね合いで天秤にかけていただき、納得のいくご決断をされるのが宜しいかと存じます。
待ちやすさの向上
「予約システムの必要性」という文脈の中では、「待ちやすさの向上」と言えば順番予約を前提とすることが多いでしょう。時間帯予約の場合、「決められた時間を守る」という前提がブレなければ待ちやすくなりますが、それはアナログなノートの管理でも同じこと。インターネットによる予約の取りやすさが待ちやすさにつながるとも考えられますが、それは「待ちやすさ」というより「利便性の向上」とも言える部分ですので、次の項目にまとめるといたしましょう。
順番予約こそ「待ちやすさ」をテーマにした予約方式と言っても過言ではありません。流動的になりがちな1人1人の診察時間を、時間では無く順番に着目することで、順番が回ってくるまでの時間を自由に活用することができるようになります。ちなみに、順番予約をアナログ方式でやることも不可能ではありませんが、相当やりにくい部分が出て参ります。例えば配布する番号券は色々考えようがございますが、インターネットを使って今の待ち状況を確認する事は、システムが入っていないとなかなかできません。
では、「待ちやすさの向上」を開業のタイミングから考えるべきか、否か。これはなかなかに微妙な問題でございます。例えばご開業当初、番号を配る程患者様がいらっしゃらない場合、極端に言えば待っている患者様がいない状態では、順番予約システムそのものがあっても無くても「待ちやすい」状態になりますので、必ずしも必要ではないとも考えられます。
しかしながら昨今は、「混雑対策をしているか、否か」といったクリニック様の姿勢そのものが、患者様との信頼関係の前提に立つ場合がございます。つまり、「混んでしまってから、では遅い」という可能性もございます。
しかしこれだけでは、導入に踏み切るのは思い切りが必要かと存じます。コストもかかるお話でございますので、導入した時点での見返りを期待したくなるのも、また人情でございましょう。
システムによる接点の多様化
「予約システムを導入すると、インターネットで予約ができる。」新規ご開業のタイミングで予約システムを導入する意味としては、最も分かりやすく、尚且つ注目すべきポイントかと存じます。しかしこれは、単に利便性が向上するという話に留まるものではございません。
重要なのは「クリニック様と患者様との接点が多様化される」という部分でございます。例えば、「インターネットを使った予約ができる」「順番が近づくと、電話を使った呼び出しがかかる」「アプリのお知らせ機能でプッシュ通知を患者様に届けられる」、といったシステムならではの機能により、接するポイントの増加や最適化が期待できます。つまり、「多くの患者様を集め、その患者様が離れずに、何かあればまた相談しやすい環境を作る」ということに、予約システムの存在が貢献します。
逆の言い方をすれば「ただ予約が取れるだけ」の予約システムでは、ご開業のタイミングに導入を迷っても無理はありません。重要なのは「患者様とのコミュニケーションツール」として、予約システムが活用できること。その点を考慮したシステムであれば、できるだけ早期の導入をご検討されたほうが、得られるものは大きいかと存じます。
この点はやや伝わり難い部分もございまして、我々も過去セミナー等で積極的に情報を発信するよう努めて参りましたが、この「積極的な予約システムの活用」という観点はメーカーの都合に見られてしまうこともあり、なかなか真っすぐには伝わらないもので、どう説明するのが良いやら、、
失礼しました。
このシリーズは「端的な回答」が条件でした。
本日のまとめに入りましょう。
Summary(まとめ)
- 予約システムには様々な側面がある為、混同せずにメリットを見極めることが重要。
- 予約管理の効率化という観点のみでは、新規開業時に導入するメリットを感じにくい。
- 待ちやすさの向上は、混んでいるか否かの前に、対策を取る姿勢があるか否かを見られていることもある。
- 接点の多様化を生むことこそが、予約システムを早期導入する上での最も大きなメリット。
- コミュニケーションツールとして機能する予約システムは、集患・増患といった考え方との親和性が高い。
- 投稿者: 佐藤三千代
- 予約システムの使い方
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