クリニック予約のヒント(12)老人で混み過ぎるクリニックにおける診療予約システム
クリニック予約の
疑問に答えるシリーズ
シリーズ「クリニック予約のヒント」では、予約システムに関する質問・疑問に対して端的に回答していきます。
【12回目】となる今回はこちら
Q:高齢者で混雑するクリニックなので、インターネット予約は効果が出ないと思います。このような状況でも、診療予約システムは効果がありますか?
では、参ります。
インターネット予約「だけ」ではないシステム。
やや誤解をされているように思われますが、それも仕方のないこと、なのかもしれません。
曰く「予約システムを導入するとインターネットで予約が取れます」、あるいは「スマートフォンで順番が取れるようになり便利なシステムです」etc… 短時間でご説明する際に、メーカーの人間ですらこのような言い方をすることは珍しくありません。正直、私にも身に覚えのあるところでございます。
しかしながら実際のところ、多くの予約システムは「インターネット予約ができるだけ」のシステムではございません。「特にアイチケットの予約システムはその傾向が強い」と、自負しております。つまり、アイチケットの予約システムはインターネット予約「以外」の部分でも、有効な効果を発揮するシステムなのでございます。
患者数も多いならば、順番予約。
ご相談いただいた状況としましては、ご高齢の患者様が割合として多く、しかも「混雑」という言葉から、全体の患者数自体もかなり多いクリニック様であることが伺えます。
この状況であれば、複雑な時間帯予約はなかなか難しいように思われます。もちろんできないことは無いのですが、かかる手間と効果のバランスをイメージしていただければ、できるだけシンプルな仕組み、変更の手間がかからないような仕組み、予定通りに進まなくとも調整が効きやすい仕組みが望ましいことに同意いただけるのではないかと思います。
患者様全体の人数が多ければ、どうしてもそれに比例してイレギュラーな対応が増えます。お年寄りの患者様が多いのであれば、説明が簡単で理解しやすい内容でなければ、決めたルールに従っていただくこともままならないのが現実でございます。
そもそも、1人あたりにかかるお時間がそれぞれ異なる一般的なクリニック様の事情からすれば、時間を決めた約束をするのはなかなか難しいこと。しかも、一定のお時間に複数人の予約を受けたり、予約をしても多少の待ち時間が発生するといった、捻りの利いた時間帯予約についてご理解いただくには、少なくともそれ相応のお時間をかけて説明しなければなりません。
お時間をかけて説明しても、「患者様の多くにご納得いただけるか?」と問われますと、正直自信がございません。発想の柔軟なお若い方が相手であればご理解いただけるかもしれませんが、お年寄りの患者様が多いのであれば、やはり複雑なことは避けた方が無難ではないかと思います。
そこで私がお勧めいたしますのは、順番を配り「概ね」その順番で呼ぶ方法、つまり「順番予約」でございます。
「順番予約とは笑止。スマートフォンで順番を取るなど、話にならん。」などと思われるのは、早計でございます。順番予約における「インターネット経由での順番取り」は、あくまで補助的なもの。そもそも「順番予約」とは「順番を約束する」というのが、本来は示す意味。スマートフォンで順番を取るのは、利便性を押し進めた方法の一つに過ぎません。
目安となる「番号を配る」ということ。
番号を配り、現在の番号を示しながら順番に呼ぶことで、患者様は目安を持って待つことが可能となります。通常、患者様それぞれの診察時間が一定とはなりませんので、当初の想定より長く待つ、あるいは早く呼ばれる、といったことも当然ございましょう。しかしそれでも良いのでございます。
確かに患者様としては、時間が決まって待たずに済むのが理想ではございます。しかし、「時間を約束しても、約束した時間に呼ばれない」とすれば、それはいかがなものでしょう?多くの方はこのように思われるのではないでしょうかー「できない約束はしないで欲しい。するならば『できる約束』をして欲しい。」
1人当たりの時間が前後するという事情を前提とし、「できる約束」を目指した予約方法こそが順番予約です。目安の順番がわかるだけでも、過ぎた予約時間を気にしながら待つより、落ち着いて待つことができるのでございます。
さて極端な話、アナログ方式でホワイトボードに番号を書いたり消したりしながら、プラスチックの番号券を配っても近いことができますが、システムを使う意味はどこにあるのでしょうか?
これは具体的にかかる作業を、スタッフ様に聞いてみると宜しいかもしれません。ホワイトボードに番号を書いたり消したり、患者様が無くした番号札を補充するため代替品を用意したり、毎回消毒をして定位置に戻したり… 試しに一度トライしていただければ、ご納得いただけるかと存じます。以前、ウェビナーでアナログな方法を探ったこともございましたので、動画をご参照いただいても宜しいかもしれません。
手間がかかり過ぎて、混雑したクリニックで実施するのは正直、現実的ではございません。
そして何より、「院外から状況が分からないため、適切なタイミングで戻ってくることができない」というのが、システムを使わない場合の最大の弱点でございます。
お年寄りはスマートフォンを使えないのか?
「院外で順番を確認するのであれば、スマートフォンを使う必要が出て来るのではないか?」そうでございますね。確かに、それは否定できません。もちろんご高齢の患者様に、スマートフォンを使った複雑な操作を強いることが難しい、という事情を失念している訳ではございません。
しかしながら、「操作」と一口に申しましても、レベル感の違いはございます。
例えば、ご自身の情報を事細かに登録する作業は難しいかもしれません。スマートフォンを使って順番を取る事も、多くの方には難しいかもしれません。しかし、特定のアプリを開き、決まったボタンを1つ押すのであればいかがでしょう?もちろん全員とは申しませんが「登録作業や順番取りに比べればまだマシ」と考えるのは、過ぎた考えでございましょうか。
私は、順番予約システムにおける「スマートフォンを使った、外部からの待ち状況の確認」であれば、多少なりともできる方がいらっしゃると考えております。その操作ができれば、院内が混雑している際に一旦外に出ていただいて、適切なタイミングで戻ってくることが可能となります。
混雑している中で待つのは患者様とて辛いもの。多少の努力で状況を変えられるのであれば、スマートフォンの操作も覚えていただける部分はございましょう。もちろんスタッフ様によるご案内は必要となりますが、「あと、どれくらいかかるのか?」と、判で押したようなお問い合わせが延々続くことを考えれば、スタッフ様にもご協力いただけるものと信じております。
それでも難しいならば、電話呼出か。
「どうあっても、インターネットの操作をさせない」というのであれば、電話呼出機能の活用をお勧めいたします。この機能を使えば、順番が近づくと電話がかかりますので、お年寄りでも電話を受けることさえできれば、適切なタイミングで戻ることが可能となります。
もちろん、この仕組みも完璧ではございません。
携帯電話を持ったまま電波の届かない場所で待機していた、タイミングが悪く電話を取る事ができなかった、気付くことができなかった、うっかりしてしまった… タイミングを逃す可能性を上げれば、キリがございません。
それでも、できるだけ多くの方を院外に出し、院内の混雑を防ぐことはやはり重要でございます。患者様にも協力していただき、多くの方が過ごしやすい環境を目指すならば、できることから始めるスタンスもまた一つ。一部の方を電話呼出で救い、一部の方はスマートフォンによる待ち状況表示への誘導で救い、どうにもならない方も院内の待ち状況表示で落ち着いて待っていただく…
「少しずつの変化が徐々に浸透することで、大きな変化につながることもある」と、そのように考えておりますが、いかがなものでございましょうか?
答えを待たず、本日のまとめへと参りたいと思います。
Summary(まとめ)
- 予約システムはインターネット予約「以外」でも効果を発揮する。
- 高齢者で混雑しているクリニックならば、順番予約がお勧め。
- システム化した順番予約で、インターネット予約を積極的に使わない場合もある。
- 院外から状況が分かるのが、システム化して得られる大きなメリット。
- 順番の確認のみならば、スマートフォン操作のハードルは下がる。
- 電話呼出機能を活用することで、より外出しやすい環境を作ることができる。
- 完璧を目指すよりも、現状の改善に目を向けることが重要という考え方もある。
- 投稿者: 佐藤三千代
- 予約システムの使い方
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