事例の研究(3)「オンラインなし順番予約」改め「オンラインあり時間帯予約」
導入環境の概要
予約方式 | 順番予約 ⇒時間帯予約(7人/30分) |
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オンライン予約 | なし ⇒1週間前~前日18時まで実施(上限4人/30分) |
院内モニター | 待ち状況のみ表示 ⇒サイネージコンテンツのみ表示 |
番号券・予約票 | 番号券を発行 ⇒院内で予約した際に予約票を発行 |
利用端末 | 受付 ⇒アイチケットのレンタルiPadを使用 |
はじめに
シリーズ【事例の研究】では、実際にあった導入・運用事例を取り上げながら、予約システムについて考えていきます。
プライバシー配慮の観点から基本的にクリニック名は伏せつつも、可能な限り詳細な情報を提供し、これからの予約システム導入検討や運用構築の参考にしていただけるよう努めて参ります。
3回目に取り上げるのは、アイチケットの予約システムを半年強【オンライン予約なしの順番予約】でお使いいただいた後、【オンライン予約ありの時間帯予約】に変更されたクリニック様の事例です。
システム導入時の状況
こちらのクリニック様はシステム導入以前から患者数が非常に多く、院内は密状態、待ち時間に対する不満も患者様から出ているとのことでした。そこで、患者満足度の向上と院内の密解消を狙い「順番予約」をご提案しました。システムを導入すると、番号券の配布とインターネットも使った待ち状況の共有ができ、「あとどれくらいで呼ばれるか」わかるようになります。
導入時点でスタッフ様の業務負荷もかなり高い状態でしたので、インターネットを活用した受付「オンライン予約」については一旦先送りとしました。シンプルな順番予約であっても、待ち状況に関する質問が減ることでスタッフ様の物理的な業務負荷も減りますし、待合室に患者様がひしめき合う状態が解消されれば心理的な負荷も減ります。
オンライン予約が浸透すれば、混雑時の効果的な人数制限や患者満足度の更なる向上も期待できましたが、立ち上げ時の説明にかかる手間を考えて、よりハードルの低い形でスタートした訳です。
予約方式
システム導入後、待ち状況の目安がわかるようになり、患者様の待ち時間に対する満足度は改善されました。しかしながら、当初期待したよりも外出する患者様が少なく、院内の混雑はあまり解消されませんでした。クリニック様の近くに「時間をつぶせる商業施設がない」といった立地的な条件も影響し、多くの患者様が院内で待つことを選択されてしまいました。
この状況でまずご提案させていただいたのは、シンプルに「順番予約にオンライン予約を組み合わせる」という運用です。オンライン予約を活用すれば、「順番が近づいてからクリニックに向かう」という新しい行動パターンを患者様が選択する余地が生まれますので、院内の混雑緩和が期待できます。
しかしながら、クリニック様としてはより強力な方法を希望されました。急激な変化にはリスクも伴いますが、今回は「徐々に」というよりは「一気に」という力加減での変化を望まれましたので、一歩先に踏み込んだ「全面的な時間帯予約への切り替え」を進めることになりました。
オンライン予約
患者数の多いクリニック様ですので、時間帯予約にしたところでスタッフ様の負荷が増えてしまうと対応しきれません。そこで予約電話の削減も狙い、インターネットを活用した「オンライン予約」を同時に開始することになりました。ただし、インターネット予約の期限は前日の18時までとし、急な予約で当日バタバタしないようにしました。
予約制とは言え一般的な保険診療を中心とした皮膚科クリニック様でしたので、予約せずに当日来る方もそれなりにいらっしゃいます。また、インターネット経由ではなく電話で予約を取ろうとする方や、次回の予約を帰りがけに取る方の事も見込んでおく必要があります。
平均的な診察スピードから逆算して、最大で30分ごとに7人分の予約が取れる設定にしましたが、オンライン予約分はそのうちの4シートを上限としました。残る3シートと予約の入っていない分が、当日直接来院した方や電話予約、院内予約分となります。あまり極端にインターネット側に制限を加えすぎると利用してもらいにくくなりますのでバランスが難しいところですが、ひとまず半数程度の上限としました。
ちなみに当日分の予約枠がすべて埋まってしまった場合、更に直接来院した患者様には、原則状況を説明して午後や翌日以降の予約を案内し、あまり多いようであれば再度運用を検討することになりました。
院内モニター、番号券・予約票
院内の番号表示は時間帯予約では実施しないことになりましたが、サイネージの機能を単体で活用できることから、院内モニターは待ち状況の表示用からサイネージ用に切り替えて使うことになりました。同じく、番号券の配布もしなくなりましたが、同じプリンタを使って次回の予約内容が記載された「予約票」を出力し、クリニック内で予約を取る方に渡すことにしましたので、運用を変えても導入当初用意した機材を無駄なく活用できました。
また、予約票は当日分の空き枠があれば業務開始前にまとめて出力しておき、直接来院した方に渡します。予約票は都度発行することもできますし、使わなければ無駄になりますが、効率を最優先して、あえて「先にまとめて出しておく」という運用を選びました。
利用端末
受付では、保守や携帯電話の回線がセットになったアイチケットからのレンタルiPadをご利用いただいております。導入当初は「順番予約」の番号券を出力したり待ち状況を表示したりする用途で活用し、「時間帯予約」に変更した後は予約の管理やサイネージを表示する用途で活用しています。
診察室には元々クリニック様で利用されているノートパソコンがありましたので、そちらを使って「時間帯予約」の予約管理を診察室でもできるようにしました。
運用変更後の反応
かなり劇的な運用の変更でしたが、大きな混乱もなくスムーズに移行することができました。患者様からも好評で、オンライン予約分はほぼすべて予約が埋まり、狙い通りといったところです。スタッフ様も過度な業務負荷が減ったと、大変喜んでいただけました。
しかしながら、全体に人数制限をしっかりとかけたことからトータルの患者数は減りました。「患者数が多すぎるから制限したい」というご要望を受け、「患者数が減ってもよい」という条件付きの運用ですので、正に狙い通りではあるのですが、お話を伺った際の院長先生のご様子からすると、やはり少し強力すぎたのかもしれません。
おわりに
実はその後、こちらのクリニック様では時々「予約の希望が多い曜日や時間帯は、予約数の上限を多めに設定する」といった微調整が追加されています。例えば、「土曜日は数ヶ月ぶりで予約制になったことを知らずに来る患者様が多い」といった状況に対応するために、「土曜日のみオンライン予約ができない追加の時間枠を設ける」といった追加調整をしました。これにより、少しでも多くの患者様に対応することができるようになりました。
今後状況が変われば、「オンライン予約ありの順番予約に変更する」といった変化もあり得ます。できるだけ多くの患者様に対応することを優先するならば、時間帯予約よりも順番予約の方が柔軟性に富んでおり、オンライン予約を取り入れれば導入当初のような待合室の混雑は回避できる可能性も高いかもしれません。しかし、患者数を一定数以下に抑えて安定的に対応するならば、現状の時間帯予約が最適です。いずれにしても、何を優先するか決めた上で、多少の微調整を効かせて最適な着地点を探ることが重要です。
今回は、「目的に合わせて、予約方式やオンライン予約の有無を上手に切り替える」ということを、実際に行っているクリニック様の事例でした。予約システム検討、活用の参考にしていただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
- 投稿者: 佐藤三千代
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