クリニック予約のヒント(15)順番予約のネット開始時間は、早ければ早い程良いのか?
クリニック予約の
疑問に答えるシリーズ
シリーズ「クリニック予約のヒント」では、予約システムに関する質問・疑問に対して端的に回答していきます。
【15回目】となる今回はこちら
Q:インターネット予約を含む順番予約システムを導入しています。朝は、ネット予約よりも先に窓口で番号を配っています。時々患者さんから「早い番号が取れないから、インターネットの受付時間を早めてくれ」と言ったクレームが入ります。インターネットの予約時間を早めた方が良いでしょうか?
では、参ります。
ご相談内容の整理
少しご相談内容が込み入っておりますので、まずはいただいた情報を整理いたしましょう。クリニック様では現状、
- 予約システムで順番予約を実施している。
- インターネットからも順番を取る事ができる。
- ただし、インターネット予約(インターネットからの順番取り)は、窓口よりも遅い時間にしている。
- 窓口では、インターネット予約が始まる前に番号を配布している。
つまり、クリニックの窓口がオープンする時点ではインターネット予約が始まっておらず、先に窓口に並んだ方に番号を配布していき、しばらくしてからインターネットからも順番が取れる、という運用されておられるようです。
それに対し、一部の患者様から
- 早い番号が取れないから、インターネットの受付時間を早めてくれ。
といったクレームが入るので、
- インターネットの予約時間を早めた方が良いだろうか。
と、お悩みになられているというのが、今回のご相談内容でございますね。
オンプレ型のサーバー事情
まず、争点となりますインターネット予約の開始時間でございますが、なぜこのような設定にしているのか、今一度考えてみましょう。いえ、そもそも、それ以外の選択肢があるのか否か、という所から考えてみましょう。
例えばシステムの設計上、インターネット予約の時間が窓口よりも先に開始できないということはあるでしょうか?予約システムのメーカーは沢山ございますので、もしかすると探せばそういったシステムもあるかもしれませんが、正直これはやや考えにくい部分でございますね。
しかし、「サーバーの稼働時間」に紐づいて制限を受けることは、可能性として大いにございます。例えば院内にサーバーを置く、いわゆる「オンプレ型」のシステムの場合は、院内サーバーの電源を落としてしまうと予約の受付はできなくなります。
従いまして、スタッフ様の来ていない早朝から予約を受けるのであれば、前日の夜にサーバー電源を落としてはいけないということになりますので、結果として数日間サーバー電源は入りっぱなしの状態となります。しかし、一般的に予約システムが院内サーバーに使用するのは業務用とは言え汎用的なパソコンですので、電源を入れっぱなしにして数日間負荷をかけ続けるような使い方をすると、機器の寿命が縮みます。
このため、オンプレ型のシステムで当日予約を前提とする順番予約を行う際はしばしば、機器の電源を帰りに落とし、朝来たら再度電源を入れるといった運用を採用します。こうすると、スタッフ様が電源を投入するまでは予約を受け付けることができませんので、極端な早朝からはインターネットで予約を受けることができないという状況が発生します。
現在はすべてクラウド化されたアイチケットにも、過去このような時期がございました。クラウド化されたことでこのような制限は無くなりましたが、他社のオンプレ型診療予約システムでは「スタッフ様が来るより前から受付することはできない」としている場合も、あるかもしれません。
できるのにやらない理由
やや前置きが長くなりました。
現在のアイチケット含め、一般的な順番予約で「ネット予約を早い時間から開始しない」という運用を取る場合の多くは、「できないのではなく、やらない」明確な理由がございます。
この際意識しておりますのは、「どのような患者様を優先するか?」という点。つまり、「ネット予約を早い時間から開始しない」という場合、「ネット予約ができない患者様」を優先的に扱うという前提に立っているのでございます。
ネット予約が早い時間から開始されてしまえば、窓口が開いた瞬間からどんなに急いだとしても、早い番号を取る事はできません。その状況を良しとするならば、ネット予約を早くから開始することもございます。
例えば、小児科のクリニック様で、そもそもネット予約率が非常に高い状況、かつ「できるだけネット予約を推奨したい」といった状況であれば、窓口よりも先んじて、早朝からネット予約を始めます。
逆に今回ご相談されたような、「インターネット受付が後」というクリニック様では、お年寄りの患者様が多くいらっしゃることと存じます。多くの高齢患者様に不公平感を感じさせないことを優先するならば、朝は窓口で早い番号を取ることができるよう、ネット予約の開始時間はあえて遅らせるのでございます。
重要なのは、説明。
さて、今回のご相談内容に戻りまして、「ネット予約の開始時間を早めることの是非」でございますが、これは、優先する対象がお年寄りの患者様ならば「現状維持」、ネット予約の患者様中心の状況であれば「開始時間を早める」、といった運用が適切かと存じます。
しかし、もし「現状維持」が運用として適切であったとしても、このクレームから課題が1つ浮かんで参ります。それは、ネット予約を使う患者様に対して「説明が十分に行き届いていない」という点です。
- ネット予約を導入しているけれども、インターネットが得意ではない患者様に配慮して時間に差をつけていること。
少なくとも、この点を明確にご説明できていれば、ある程度ご納得いただくことはできます。また、
- 早い番号ではなくとも、「順番が近づくまでは自由に過ごせるメリット」がある。
といったことについて明示されていれば、「クレーム」というテンションで受付のスタッフ様が攻撃されることは減るはずでございます。
多くの予約システムにはメッセージ機能が標準で付いておりますので、メッセージ機能を活用してWEBを活用される患者様に説明をすることが重要です。アイチケットならば、【アプリのプッシュ通知機能】や【iメッセージ】といった機能がそれに該当いたしますので、それらを駆使して患者様に意図をお伝えすることができます。
すべてのクレームに応えることは不可能
しかしながら、これは特定の個人ではなく、集団を見て判断する内容でもございます。
例えば、匿名性が故に他人に対する誹謗中傷が度々問題視されるようなSNS上におきましても、予約システムに関するコメントが散見されますが、それらの中に果たしてどの程度価値ある提言が含まれているものか、疑問が残ります。
「意味が無い」「意味が分からない」「使えない」「役に立たない」などといった、自身の頭で思考することや理解することを放棄し、吐き捨てられた言葉に一喜一憂することに、恐らく意味などございません。
来院された患者様の中にも、いかに説明しても「自分にとってのメリット」以外を想像できない方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、今一度お考えください。
重要なのは一部のクレームにこだわることよりも、多くの患者様、ご自身のクリニックにとって大事だと思える患者様にご納得いただけるような運用を、構築することではないでしょうか?
失礼いたしました。やや差し出がましい物言いでございましたね。
それでは、本日のまとめに参りましょう。
Summary(まとめ)
- オンプレ型(院内サーバー型)のシステムでは、ネット予約の開始時間にサーバー事情が関わってくる。
- 順番予約における「ネットからの順番取り」を遅らせる理由は、高齢者などネットが苦手な方への配慮。
- 配慮する相手が高齢者ではなく若年層であれば、ネットからの順番取りを早めることもある。
- 重要なのは、メッセージ機能等を駆使して、運用の意図やメリットを患者様にしっかりと説明すること。
- すべての要求に応えることより、大切な相手を中心にした、筋の通った運用を構築することが重要。