クリニック予約のヒント(7)内科での注意点
クリニック予約の
疑問に答えるシリーズ
シリーズ「クリニック予約のヒント」では、予約システムに関する質問・疑問に対して端的に回答していきます。
7回目となる今回はこちら
Q:内科のクリニックで予約システムを扱う際の注意点があれば教えてください。
では、参ります。
予約における内科の特性
内科に限ったお話ではございませんが、予約を考える上では診療科目以上に「そのクリニック様固有の特性」が重要となります。従いまして、一般的な傾向や注意点が必ずしも当てはまらないことも往々にしてございます。ここで扱うのは一例、よくある例でございますので、あくまで参考としてお考えいただければ幸いでございます。
一般内科を中心としたクリニック様で特に良く言われますのは
- 慢性疾患を抱えた高齢者が多い。
- 診察だけではなく、検査も必要なことが多い。
といったあたりでございましょうか。
それぞれについて考えてみましょう。
慢性疾患を抱えた高齢者が多い
こちらのお話に関しては、「慢性疾患の患者様が多い」という点、それから「高齢者の患者様が多い」という点それぞれを、まずは別の事象として捉えたいと思います。もちろん「高齢者には慢性疾患を抱えた方が多い」という前提もございますが、「予約の注意点」を考える上では要素を分けて、最後にバランスを確認する方がシンプルかと存じますので、一旦分けて考えさせていただきます。
まず、「慢性疾患の患者が多い」ことがどのような影響を及ぼすか、ですね。
慢性疾患を抱えた患者様の場合、定期的に通院されることになりますので、「次回の予約」を取られるケースが多いかと存じます。はい、あくまで一般論でございます。つまりこの場合「未来の予約」が視野に入って参りますので、システムとしては「未来予約への対応」を意識する必要が出て参ります。
それではもう一つの要素、「高齢者の患者様が多い」という点はいかがでしょうか。
高齢者の患者様の場合、インターネットが得意ではない方も多くいらっしゃるでしょう。はい、あくまで一般論でございます。私自身、90歳に近い年齢の方がご自身でパソコンからオンライン受付の上ご来院された様子など拝見したことがございますので、もちろん色々な方がいらっしゃることは存じております。しかしスマートフォンは電話でしか使っていないような方が多くいらっしゃることも、よくある話でございます。
当然ながらそのような状況において、インターネットによる受付「オンライン受付」の扱いはより慎重に考えなければなりません。オンライン受付を利用することが前提、あるいはオンライン受付できない方が不公平感を感じるようでは、インターネットの得意/不得意による軋轢を生む可能性がございます。これは主にシステムの運用面として、オンライン受付を実施するのか、実施するならばどの程度実施するのかといった部分を、より注意深く取り扱う必要があることを意味します。
診察だけではない事も多い
では、「診察だけではなく、検査も必要なことが多い」といった状況はどのような影響をもたらすでしょうか。
患者様の流れを見てみますと、この状態では来院順ですべてが進む訳ではなさそうです。診察の後に検査、検査の後に診察、など複雑な動線を描くこともあり得ることでしょう。
来院順で進む訳ではないために、「来た順に順番を当てはめて進めるのでは、混乱が生じそう」というご意見も出てきそうでございますね。システム的には、順番予約が良いのか、時間帯予約が良いのかなど、クリニック様が大いに悩まれる局面の1つでございます。
時間帯予約が最適、なのか?
先ほどまでのお話に出て参りました
- 慢性疾患の患者様 ⇒未来予約への対応
- 高齢者の患者様 ⇒オンライン受付に配慮
- 検査が多い ⇒全体が順番になりにくい
これらを直線的につなげますと、
- 【未来予約】×【オンライン受付に配慮】×【順番ではない予約】⇒【未来を含む時間帯予約で、オンライン受付に配慮】
となりそうなのですが、残念ながらそれ程単純なお話でもございません。
課題を見直す
まず、解決したい課題について。予約システムを検討することになった背景、動機とでも言いましょうか。例えばこんなことではございませんでしたか?
「予約を一部でおこなっているけれども、予約をした時間に呼べないのでクレームが出ている」
実に、これは内科以外の科目も含め、頻繁にご相談される内容でございます。
特に内科様の場合、慢性疾患の患者様を日時指定の予約で対応されることは、極々自然な流れかと存じます。システムを入れていなくとも、ノート等で予約を管理することは可能でございますので、多くの内科様でこのような対応がなされているものと存じます。
では、その状況で時間帯予約のシステムを入れて何か変わるのか?例えば先ほどの「予約してもクレームが出ている」という状況を変える何かがあるのか?
答えは否でございます。残念ながらその状況で、「多少の効率化」以上のものは予約システムに期待するべきではございません。
先ほどの例であれば、「予約をした時間に呼べない」ということが、そもそもの元凶でございますので、日時を指定した予約で解決するのであれば、1人あたりの時間に余裕を持つこと、つまり予約数を減らすことが先決でございます。
これがもし「できるだけ多くの人数を詰めて診察したい」というご要望であれば、我々は間違いなく順番予約をお勧めいたします。1人当たりにかかるお時間が一定にならないクリニック様で、より多くの患者様に対応することを考えるのであれば、状況に流動的に対応できる「順番予約」の方が適しております。
もちろんお抱えの課題次第によりご提案のバランスは変わって参りますが、システムに過剰な期待をされますと「なるほど、確かに思ったことはできるようになったが、問題は一向に解決していない」という状況になりかねませんので、注意が必要なのでございます。
順番にならない部分をどうするのか
しかしながら、「検査等の影響で順番にならない」という部分をどう考えるか、という問題がございます。果たして順番予約はこの状況で活用できるのでしょうか。
結論から申しますと、活用できる可能性は大いにございます。まず「およそ順番になる部分はどこか」、そして「それが待合室の混雑に大きく影響しているのか」をご確認いただければすぐに判明いたします。
良くある例としましては、「検査は先に回すから順番ではないが、診察はおよそ順番」という状況です。特にクリニック様では「診察を受け持つドクターが1人」という事も多く、全体のスピードがドクターの診察スピードに依存することが往々にしてございます。このような状況であれば、「多少のイレギュラーは無視して、診察の順番として順番予約を使う」という方法がシンプルかつ効果的でございます。
さらに、ご高齢者が多いことを鑑みるなら、「オンライン受付もしない形で、外出先から電話を使った自動呼び出し機能で呼び戻す」、「若い方の場合は自信でインターネットを見て戻ってもらう」と対応を分けて運用することで、順番予約がより機能する状況を作ることができます。
慢性疾患の患者様をどうするのか
では、慢性疾患の患者様をどのように扱えば良いでしょうか?
もちろん状況により対応は異なるのですが、もしも「日時を指定した予約そのものが、待たせる原因になっている」という状況であれば、慢性疾患の患者様も含め、日時指定の予約は取りやめることをお勧めします。はい、「それは難しい」と反論されることも重々承知の上で申し上げております。
患者数が多いクリニック様では、そもそも日時を指定した予約は「守れない約束」につながる可能性がございます。「約束した時間に呼ばれない」ということは、患者様の期待を裏切る形となりますので、「それなら、むしろ約束しないで欲しい」と考える方も増えて参ります。
そもそも慢性疾患の患者様も含め、多くの場合「予約を取る」ということは患者様に、「待たずに案内される」という期待を持たせることになります。もちろん患者様に良かれと思い、予約を始めるクリニック様がほとんどでございます。しかし、裏目に出てしまっているクリニック様が多いのもまた事実。状況に合わせて対応方法は変更させるべきなのでございます。
患者数が多い状況で交わす約束であれば、「時間を除いた日にちのみ」そして、当日は順番予約で番号を取っていただくのが宜しいかと存じます。
もちろん初めに申しました通り、これはあくまで一例でございます。ただし「良くある」例でもございます。我々の経験からすると、多くの場合「順番予約」を取り入れて、「時間帯予約」を取りやめることで、「待ち時間に対するクレーム」を抑えることが可能です。
しかし、現状を冷静にお認めにならない先生の場合、それをシステムで無理に何とかしようとされ、結局何も変えることができずに状況が改善しないということも多々あり、なんとも、、
失礼いたしました。お話が長くなるところでございました。
それでは、まとめに参りましょう。
Summary(まとめ)
- 内科では、高齢者、慢性疾患、検査と診察の混線、といったことが予約に影響しやすい。
- 消去法で時間帯予約に行きついたとしても、それが課題を解決できるとは限らない。
- 「予約しても待たされる」といったクレームは、日時を指定した時間帯予約そのものが破綻している可能性を示唆している。
- この場合、順番になる部分を見つけて、部分的にでも順番予約で待ち時間の解決を図ることが有効。
- 高齢者対策としては、オンライン受付の扱いに注意し、場合によっては使わない。
- 慢性疾患の患者様の日時予約は状況次第では取りやめ、次回の来院予定日のみ決めて順番で対応する。
- 投稿者: 佐藤三千代
- 予約システムの使い方
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