時間帯予約のトリセツ⑦~CASE3.順番制細分化タイプの場合(後編)~
~前回までのおさらい~
7回目となりました「時間帯予約のトリセツ」シリーズ、今回は<順番制細分化タイプ>解説の後編です。時間帯予約の解説を少しずつ説明していますので、前回までの記事を未読の方は先にそちらをご覧ください。
⇒シリーズ第1回 時間帯予約のトリセツ①~導入目的と4タイプへの分類~
⇒シリーズ第2回 時間帯予約のトリセツ②~CASE1.時間帯占有タイプの場合~
⇒シリーズ第3回 時間帯予約のトリセツ③~CASE2.時間帯シェアタイプの場合(前編)~
⇒シリーズ第4回 時間帯予約のトリセツ④~CASE2.時間帯シェアタイプの場合(後編)~
⇒シリーズ第5回 時間帯予約のトリセツ⑤~CASE3.順番制細分化タイプの場合(前編)~
⇒シリーズ第6回 時間帯予約のトリセツ⑥~CASE3.順番制細分化タイプの場合(中編)~
改めまして、<順番制細分化タイプ>の時間帯予約とは以下のような方法を指します。
<順番制細分化タイプ>
<時間帯シェアタイプ>同様、1つの枠中で複数人に対する診療行為を前提とした予約の取り方。1枠1時間など、<時間帯シェアタイプ>よりも1枠の時間を長めに取るのが特徴。予約した上で長い時間待たせる可能性があるので、時間帯ごとの順番を割り振って番号券を渡すなど、<順番予約>的な要素が組み合わされる。順番予約の[午前][午後]といった大きな枠組みを細分化したような方法。
前回は<順番制細分化タイプ>について、「来院するべきタイミング」や、「順番通りに進めるべきか、否か」など、基本的な運用のポイントを確認していきました。
~<順番制細分化タイプ>時間帯シェアタイプとの共通点~
今回は、<順番予約>と<時間帯予約>のハイブリッドとも言える<順番制細分化タイプ>を活用するのに「最適なシチュエーション」を、類似タイプとの比較から探っていきたいと思います。まずは<時間帯シェアタイプ>と<順番制細分化タイプ>を比較してみましょう。
【<時間帯シェアタイプ>と<順番制細分化タイプ>の共通点】
・一定の時間帯の中で複数人の予約を取る。
・来院タイミングは予約の時間帯が始まる前。
この2つのタイプでは、「30分や1時間など、区切られた時間の中に複数人の予約を入れる」「予約患者は約束した時間が始まる前に来院する」といった部分が共通しています。このため、「患者の来院タイミングを複数人分まとめてコントロールし、来院時点での患者分散化を狙いやすい」という特徴を持つことができます。
どちらの場合も、分散化を考える上で特に注意するポイントは「1枠あたりの患者数」です。1枠あたりの人数が多ければ同時に居合わせる人数も多くなるため密になってしまいます。また、1枠の中で対応が終わらないと、後ろの時間を巻き込んでずれていくことになります。このとき、後ろの予約枠に空きの余裕が無い状態であれば、巻き返しが効かない状態で後ろの時間帯にしわ寄せをし続けることになり、次々と約束を破る状況になりかねません。
~<順番制細分化タイプ>時間帯シェアタイプとの相違点~
【<時間帯シェアタイプ>と<順番制細分化タイプ>の相違点】
・<時間帯シェアタイプ>では「1枠あたりの時間が30分程度で、そのままでも待ちきれる人が多い」のに対して、<順番制細分化タイプ>では「1枠あたりの時間は1時間程度で、そのままでは待ちきれる人が少ない」。
・<時間帯シェアタイプ>では「予約枠の中で、順番が前後しても大きな影響が出ない」のに対して、<順番制細分化タイプ>では「順番通りに進めないと、不満が出やすい」。
<時間帯シェアタイプ>
<順番制細分化タイプ>
これらの相違点は、「不満を高めずに患者を待たせる方法の違い」に関係しています。<時間帯シェアタイプ>は「我慢できる長さで1枠を区切る」ことで、<順番制細分化タイプ>は「我慢できない長さで1枠を区切る代わりに、目安となる順番を約束する」ことで、待ち時間に対する不満を爆発させないようにしています。
基本的に、1人にかかる時間がばらつきやすい「クリニック・診療所」の特徴を踏まえると、クリニック側としては1枠あたりの時間を長く設定する方が「枠単位」で約束を守りやすくなります。<順番制細分化タイプ>が採用されるのはまさにこの点による部分が大きく、<時間帯シェアタイプ>よりも<順番制細分化タイプ>の方が構造的に約束を破るリスクを抑えやすいと言えます。反面、一定以上の長さの待ち時間は「目安として分かりづらい」「長すぎて待ちきれない」といった状況を生み出す為それだけでは成立しにくく、番号券などを組み合わせて待ちやすくする工夫が必要です。
<順番制細分化タイプ>では「順番を約束する」ことで不満を抑えるため順番が入れ替わること自体はあまり許容されませんが、<時間帯シェアタイプ>では「1枠全体を通しても待ちきれる人が多い」長さで時間を設定するため、「効率優先で順番が前後しても」許容されやすいと言えます。つまり、クリニックとしては「枠の中で、多少順番を入れ替えた方が効率的なのか、否か」によって、2つのうちのどちらを選ぶべきか判断することができます。効率を考えると「順番が入れ替わる状況がどうしても頻発する」という前提であれば、「枠の中で適宜順番を入れ替えやすい<時間帯シェアタイプ>」を選ぶ方が運用しやすく、「基本的には順番通り」という前提であれば「患者1人ごとに発生する時間の前後を全体で吸収しやすい<順番制細分化タイプ>」を選ぶ方が運用しやすいと言えるでしょう。
ただし「基本的に順番通り」でも、「順番を約束する」際に発生する「番号券を渡す」「現在番号を次に進める」といった作業の削減を考慮して、あえて<時間帯シェアタイプ>を活用することがあります。ここで重要なのは「約束を守り切れること」ですので、「1枠あたりの時間が多少短くても、枠単位での約束をほぼ守り切れる」状況であれば、積極的に<時間帯シェアタイプ>を活用できます。
~<順番制細分化タイプ>順番予約との共通点~
では次に、<順番予約>と<順番制細分化タイプ>を比較してみましょう。
【<順番予約>と<順番制細分化タイプ>の共通点】
・一定の時間帯の中で、患者に対して順番を約束する。
<順番予約>では「一定の時間」という枠の概念はあまり意識されませんが、「午前」(あるいは「午後」)を1つの枠と捉えると、<順番制細分化タイプ>と同様に「区切られた枠」の中の話だということがわかります。その上で、「1枠の時間が長いので、何も対策しないと患者が待ちきれない」ことから、「待ち時間の不満を緩和するために、目安として順番を約束する」という点が共通しています。
どちらの場合も「順番を約束する」という点が共通していますので、「順番が頻繁に前後して、番号を渡しても目安にならない」というような状況では効果を発揮できません。
~<順番制細分化タイプ>順番予約との相違点~
【<順番予約>と<順番制細分化タイプ>の相違点】
・<順番予約>では「1枠に相当する時間が、設定上の限界値である」のに対して、<順番制細分化タイプ>では「1枠の時間は1時間程度と、長めではあるが細分化されている」。
・<順番予約>は「当日のみ」であるのが一般的なのに対して、<順番制細分化タイプ>は「数日前も含むなど、事前予約に対応する」のが一般的。
・<順番予約>では「患者の判断によってしまうため、強力には来院タイミングをコントロールできない」のに対して、<順番制細分化タイプ>では「患者の来院タイミングそのものを強力にコントロールし、患者分散化を狙いやすい」。
<順番予約>
<順番制細分化タイプ>
<順番予約>では「時間を意識させない」ことで「ゆるやかな分散化」を図ります。このため通常は「1枠の長さは限界まで」引き延ばされ、来院タイミングも流動的になります。「1人当たりにかかる時間」は「あくまで目安で常に変わるもの」として扱われ、「多少時間が前後する」という状況に柔軟に対応することができます。
反面、流動性が高いため事前の予約とは相性が悪く、「患者が約束を守る」という点から見ても確実性の高い「当日のみの受付」を前提とするのが一般的です。このため「事前に準備が必要」となる内容には、適しません。
また、待ち状況の確認を徹底すれば空いている時間を狙って患者が来院する「緩やかな分散化」を狙えますが、最終的に来院タイミングの判断は患者に委ねられるため、強制力を持ってコントロールし分散化を図るには至りません。
これらのことから、「患者数が多く、1人当たりの時間が前後しやすい」状況や「事前の準備が不要」であれば<順番予約>、逆に「患者数が一定数以内で収まり、ある程度余裕を持って予約を入れることができる」「事前の準備が必要」という状況であれば<順番制細分化タイプ>が運用しやすいと言えます。
~<順番制細分化タイプ>判断するポイント~
一旦まとめますと、
・来院タイミングでの分散化を狙うか、否か。
・順番が頻繁に前後するか、否か。
・1人にかかる時間が大幅に前後するか、否か。
・事前に準備を必要とするか、否か。
・来院する患者数は一定以内で、ある程度余裕を持って予約できるか、否か。
といった点を考慮し、総合的に判断することが必要です。