時間帯予約のトリセツ⑬~事例紹介その4~
~前回までのおさらい~
13回目となりました「時間帯予約のトリセツ」シリーズも、今回で一旦の完結となります。
前回までの記事を未読の方は先にそちらをご覧ください。
⇒シリーズ第1回 時間帯予約のトリセツ①~導入目的と4タイプへの分類~
⇒シリーズ第2回 時間帯予約のトリセツ②~CASE1.時間帯占有タイプの場合~
⇒シリーズ第3回 時間帯予約のトリセツ③~CASE2.時間帯シェアタイプの場合(前編)~
⇒シリーズ第4回 時間帯予約のトリセツ④~CASE2.時間帯シェアタイプの場合(後編)~
⇒シリーズ第5回 時間帯予約のトリセツ⑤~CASE3.順番制細分化タイプの場合(前編)~
⇒シリーズ第6回 時間帯予約のトリセツ⑥~CASE3.順番制細分化タイプの場合(中編)~
⇒シリーズ第7回 時間帯予約のトリセツ⑦~CASE3.順番制細分化タイプの場合(後編)~
⇒シリーズ第8回 時間帯予約のトリセツ⑧~CASE4.順番制拡張タイプの場合~
⇒シリーズ第9回 時間帯予約のトリセツ⑨~まとめと補足~
⇒シリーズ第10回 時間帯予約のトリセツ⑩~事例紹介その1~
⇒シリーズ第11回 時間帯予約のトリセツ⑪~事例紹介その2~
⇒シリーズ第12回 時間帯予約のトリセツ⑫~事例紹介その3~
今回は、比較的オーソドックスな眼科での活用事例をご紹介します。
~事例紹介その4「D眼科」の場合~
実は「D眼科」では、開業時に<順番予約>でシステムを導入しましたが、しばらくして運用が合わないと感じ、その後2年もの間システムの運用を休止していました。しかしながら、新型コロナウィルスの影響で待合室の密対策を再度検討することになり、<時間帯予約>を活用して運用を再開することになりました。
~眼科で<順番予約>の運用が合わないケース~
必ずとは言えませんが、眼科では<順番予約>を前提とした運用が上手くいかないことが多くあります。これは、検査の種類が多岐に渡ることや、診察と検査の兼ね合いで動線が複雑になることから、単純に順番を当てはめることが難しくなりがちなことに由来します。
当然といえば当然ですが、順番予約は原則的に「順番」であることが求められます。順番であるが故に番号が目安となり、その目安を元に待ちやすさが生まれます。順番ではない状態で番号を配ったとしても、それ単体では割り当てられた整理番号が待つための目安にはならないので、「シンプルな仕組みで待つことに納得感を得られる」という、順番予約本来の良さを活かすことは難しいのです。
つまり、眼科で<順番予約>を運用する場合は、課題解決の前提に「順番制」が成立していないと、効果的な運用となりません。
~眼科で<順番予約>の運用が合うケース~
例えば「検査は順番ではないが、診察は順番」、かつ「診察の待ち時間が課題になっている」という状況ならば、診察の順番に<順番予約>を当てはめるという使い方がフィットします。
あるいは、「検査は順番ではないが、検査室に入るのは基本的に順番のことが多い」、かつ「検査待ちも含めて、待合室の密を解消したい」といった状況であれば、検査室に入る順番に<順番予約>を当てはめるという使い方が効果を発揮することでしょう。
しかし眼科の現場では、「複数の検査を効率的に進めるには、順番に進めるよりも多少順番を前後させた方が良い」といった状況も多いようです。待合室の広さ、検査や診察のスピード、対応する内容の幅広さやそれぞれにかかる時間、といった様々な要因との兼ね合いで事情は変わりますので一概には言えませんが、順番に進まない状態であれば、無理に<順番予約>を当てはめても課題解決には近づきません。
~順番を前後させるならば<時間帯シェアタイプ>~
このような状況で活躍するのが、<時間帯シェアタイプ>の時間帯予約です。
<時間帯シェアタイプ>は、「状況次第では、予約した時間帯の最初から最後まで、患者の時間が自由にはならない」ものの、「予約した時間帯の間だけ耐えてもらえば、あとは自由」、という考え方なので、1枠の中で最大限効率化を図ることが優先され、順番の前後は許容されやすくなります。従って、順番の前後が運用の中で発生しやすい眼科では、<時間帯シェアタイプ>が比較的運用にフィットしやすいのです。
仮に検査や診察の動線が複雑でも、重要なのは「時間内に予約枠内の患者対応を完了させること」なので、それぞれの順番にはこだわらなくても運用が成立します。
~「D眼科」の設定~
改めて<時間帯シェアタイプ>で運用を再開した「D眼科」では、「1時間あたりに10人」の予約を受け入れる設定としました。
1枠の単位が1時間というのは、時間帯シェアタイプとしては一見すると時間が長いように思えます。確かに1時間の間、何も進展がなく待たされるとすれば、「イライラせずに待てる限界の目安である30分」を大幅に超えてしまうことになります。
ここで関係してくるのは、「複数の検査を受ける患者が多い」という前提です。つまり多くの患者は「何も進展がなくただ1時間待たされる」ということはありません。定期的に次の検査を受けるために声をかけられるので、1時間待ちっぱなしというのは想定しにくい状態です。
また、「診察のみの、動線がシンプルな患者は先に診察に回す」、「受ける検査が多い患者から優先的に扱う」といったように、次の工程までの待ち時間が極端に長くなりすぎたり、予約枠からはみ出さないよう適宜スタッフ側で調整をかけることで、待ち時間に対する不満がたまったり、院内が密にならないよう工夫されているようです。
~オンライン予約の利用率~
オンライン予約も実施している「D眼科」ですが、患者の年齢層としては比較的高齢者が多いこともあり、オンライン予約の利用者は全体の数パーセント程度に留まります。
窓口での次回予約、電話での予約が中心となり、予約なしの直来患者も空いている枠に当てはめながら対応をされています。
~<時間帯シェアタイプ>に運用を変更してからの評価~
「D眼科」からは、「患者からの評判も良く、来院患者の分散化も達成できたので満足している」と、評価していただきました。現在は操作、運用含め順調に軌道に乗っているようです。
一旦システムの運用を休止されたクリニックだけに、我々としても改めてお力になれていることを、非常に嬉しく感じております。