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時間帯予約のトリセツ⑫~事例紹介その3~

~前回までのおさらい~

~事例紹介その3「C耳鼻咽喉科」の場合~

「C耳鼻咽喉科」も、順番予約中心の運用から全面的に時間帯予約中心の運用に切り替えたクリニックの1つです。こちらも特徴から分類すると<時間帯シェアタイプ>での運用となりますが、アレンジされている様子から一見すると<順番制細分化タイプ>にも見えるという、やや特殊な運用方法を採用しています。

耳鼻咽喉科の特性でもありますが、急性疾患の患者が多く来院するため当日の予約も受け付けているのは、先に挙げたいくつかの小児科クリニックとも共通しているポイントです。具体的に「C耳鼻咽喉科」では、「1週間前~枠終了の1時間前まで」の予約を受け付けるようにしていますが、これは事前予約も一定の需要があるため、当日を含みながらも当日だけには限定していません。

~「C耳鼻咽喉科」の特徴的なポイント-1枠あたりの長さと来院タイミング~

「C耳鼻咽喉科」では、1枠あたりの長さを通常より長めの「1時間」としています。1枠あたりの予約上限数は、日によって医師の人数が1人から2人に変わることから変動があるものの、医師1人に対しておよそ10人程度の予約ですので、予約1人あたりの時間としては単純平均で6分程度と、これ自体は標準的な長さと言えます。

一般的に、患者の不満が高まりやすいのは30分を超えた時点ですので、1枠を1時間程度にする場合は対策が必要となります。ちなみに、ここで番号券を渡し待ち状況の目安にするのが<順番制細分化タイプ>の時間帯予約でしたが、「C耳鼻咽喉科」では番号券を渡す運用はしていません。

「C耳鼻咽喉科」が採用した待ち時間への対策は「来院タイミング」に関する方法です。一般的な<時間帯シェアタイプ>では「来院タイミングは、予約時間が始まる前」ですが、これを「予約した時間帯の中で、好きな時に来院する」というルールにしました。

~<時間帯シェアタイプ>で予約した時間の中で来院した場合~

ここで振り返っておきたいのは、一般的な来院タイミングが「なぜ、予約時間の開始前」とされていたか、についてです。

<時間帯シェアタイプ>や<順番制細分化タイプ>に関する考察の繰り返しとなりますが、来院タイミングを開始前に揃えないと、この場合「1時間」という予約枠の中で「どのように偏るかが分からない」、つまりクリニック側で来院タイミングを制御していない状態となります。極端な偏りが出た場合は下図のような状態となり、後ろの予約枠に診察がずれ込んでしまいかねません。

また、運悪く次の時間帯の予約患者が早めに揃ったりすると、院内が密な状況となってしまいます。従って、「患者の動きをコントロールする」ならば、「予約開始前に集まるべき」だと考えられました。

しかし、これは理論上のリスクであって、実際には「可能性としてはあるが、必ずそうなるものでもない」という話でもあります。実際に運用してみて、「そのリスクが許容できる範囲か否かを、現実に起こった結果で判断する」という選択肢、つまり実際にやってみて、「来院タイミングの重なりによって発生する待ち時間や、院内の密の度合が、許容できない状態になることが多ければやり方を変える」という考え方もあります。

そもそも「C耳鼻咽喉科」では、長年<順番予約>による運用を実施していました。このため、運用の切り替えに際しては、「患者による時間の前後を吸収できる」という<順番予約>のメリットをできるだけ残したいと考え、「1枠あたりの時間は1時間程度の長さを保ちたい」という強い意向がありました。

このとき、オーソドックスな選択としては<順番制細分化タイプ>の採用により、「番号券を渡しつつ、1枠あたりの時間を長めに取る」というものだと思いますが、<順番制細分化タイプ>ではなく、あえて<時間帯シェアタイプ>を選択したのは、主に下記2つの背景によるものでした。

~①<時間帯シェアタイプ>による番号券を渡す手間の削減~

<時間帯シェアタイプ>と<順番制細分化タイプ>の大きな違いは「順番に進むか否か」「番号券による目安を渡すか否か」といった点です。当然比べれば、番号券を渡さずに済む<時間帯シェアタイプ>の方が、当日のスタッフにかかる負担は少なくなります。

ここでまず問題となるのは、「1時間という長めの時間枠の中で、順番のような目安を渡さずに不満が高まることはないのか?」という点です。この課題を解決するために、「C耳鼻咽喉科」ではあえて「予約した時間帯の中で、好きな時に患者を来院させる」という方法を試しました。

失敗すれば、当然来院タイミングが重なってしまいます。しかし、うまくタイミングがバラけてくれれば課題は一挙に解決です。待ち時間自体が短ければ目安の番号を渡す必要もありません。スタッフの手間も含めて、「多少患者が待つことはあったとしても、許容範囲のことが多い状況であれば良し」と考えました。

~②複数医師に絡む予約の簡潔化~

「C耳鼻咽喉科」が特徴的である理由の1つに「日によって複数の医師が存在する」という点があります。複数の医師が対応する場合、「対応すべき医師が決まっているケースがある」、「それぞれの診察のスピードが一定ではない」といった事情から、1列で管理すると順番の前後が発生しやすいと言えます。また、それぞれの医師ごとに予約を分けて取ることは可能ですが、事前に担当医師が明確ではない患者も多いことから、最終的に予約の入り口は1つにまとめた方がシンプルで管理しやすいと考えました。

<時間帯シェアタイプ>には、「来院タイミングの前後に対応しやすい」という特徴がありますので、その特徴を活かすことができれば、1列の予約で問題は解決できます。

しかし、ここでも問題になるのは、「患者の不満が高まる程の待ち時間は発生しないのか、否か」という点です。患者の来院タイミングがバラけてくれさえすれば上手く運用が回りますが、偏りが激しければ運用は破綻します。強いコントロールは効かないので、ここはある程度運任せになってしまう部分が残りました。

~「C耳鼻咽喉科」の来院タイミングは成立したか、否か~

結論から言えば、この運用は現時点で上手く成立しています。きれいにバラける日も、やや偏る日もあるようですが、総じて見ると許容範囲に収まっています。

これは、コロナ禍による患者数の減少も多分に影響しています。設定した予約枠が埋まりきることが少ないためにバラつきも期待しやすく、タイミングが偏った場合も待ち時間が長時間とはなりにくい状況になっています。つまり患者数が増えた場合は、当然リスクも増加します。ある程度予約数を抑えることで対応は可能だと思われますが、予約が常に一杯になるといった状況下では、より一般的な<時間帯シェアタイプ>の手法に寄せた方が良いかもしれません。

しかし、予約の運用に関しては、どのような方法を採用したとしても、大なり小なり状況に合わせて運用を変更すべき可能性は含んでいます。その点からすれば、「現状上手く運用できている」という結果を中心に据え、「想定から外れた際のリスクを意識し、次の打ち手を用意しておく」という明確な指針が打ち出せる現状は、健全な運用状態とも言えます。大事なのは、「状況の変化をいち早く察知し、早急に対処することができる状態である」ということで、「C耳鼻咽喉科」ではその状態を満たしています。

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